東京地方裁判所 平成11年(ワ)9705号 判決
原告 萩島商事株式会社
代表者代表取締役 萩島宏
訴訟代理人弁護士 竹原隆信
田中久也
紋谷崇俊
被告 有限会社伸榮産業
代表者代表取締役 黒嵜篤幸
訴訟代理人弁護士 中元信武
主文
一 被告は、原告に対し、金二〇〇〇万円及びこれに対する平成一〇年九月二七日から支払済みに至るまで年六分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は、被告の負担とする。
三 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
主文一項と同旨。
第二事案の概要
一 事案の要旨
本件は、ブランド品を取り扱う原告が前シーズンの売れ残り品を廃棄処分するよう委託したにもかかわらず、被告はこれを行わず横流しをしたので、原告は被告との委託契約を解除したので、契約代金の返還請求権を有するとして、また、被告の債務不履行により損害を被ったとして、原告が被告に対し、その内金二〇〇〇万円及びこれに対する契約解除の日の翌日である平成一〇年九月二七日から支払済みに至るまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
二 当事者間に争いのない事実
1(当事者)
(一) 原告は、ルーニィ、ピエスモンテ、クレデヴェール等の高級オリジナルブランド品を取り扱う、婦人服の製造販売を業とする株式会社である。
(二) 被告は、産業廃棄物の処理等を業とする有限会社である。
2(産業廃棄物処理契約の締結)
原告及び被告は、平成一〇年三月初めころ、原告が所有する約一〇〇〇箱の在庫新品衣類、靴及び鞄など合計五万四九七二点(以下「本件衣類等」という。)につき、運搬に供する車両一台あたり六万六〇〇〇円の代金で、被告が廃棄処分を行う旨の廃棄物処理契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
本件契約においては、本件衣類等のうち衣類については焼却処分する旨合意された。
原告が、新品の在庫ブランド品を敢えて廃棄処分することとしたのは、前シーズンの売れ残り衣類が大量に市場に流出することによって、衣類の廉売が行われ、原告の取り扱う高級婦人服ブランドのイメージが低下することを防止するためであり、被告もこのような目的を承知していた。
3(本件衣類等の引渡し)
原告は、被告に対し、本件契約に基づき、(一)平成一〇年三月二五日に四九〇箱(運搬車両五台分)、(二)同年六月一一日及び一二日に五五二箱(運搬車両五台分)を引き渡した。
4(代金の支払)
原告は、平成一〇年四月二七日及び同年七月二七日、被告に対し、それぞれ消費税込みで代金三四万六五〇〇円ずつを支払った。
5(解除)
原告は、被告に廃棄処分を委託した本件衣類等の一部が横流しされて廉価売却されたとして、平成一〇年九月二六日、本件契約を解除する旨の意思表示をした。
三 争点
1 被告に本件契約の債務不履行はあるか。
(原告の主張)
平成一〇年七月下旬以降、原告が被告に廃棄処分を委託した本件衣類の一部が佐賀市内並びに東京都港区内及び世田谷区内のディスカウントストアにおいて大量にしかも著しい廉価で販売されているのが発見されたものであり、被告が本件衣類等を横流しした事実は明らかである。
(被告の主張)
被告は、原告から依頼された本件衣類等の廃棄処分につき、株式会社マツモト(以下「マツモト」という。)に運搬及び選別を依頼し、マツモトは本件衣類等をダンボール類、ハンガー類、衣類に選別し、衣類の処分は株式会社キョーエイストックに任せ、同社が全て破砕処理の上、株式会社ダイレックスの焼却場で焼却処分した。
2 原告の被った損害。
(原告の主張)
(一) 本件衣類等の相当額
原告は、被告に対し、本件契約の解除に伴う原状回復請求権として本件衣類等の返還を請求する権利を有するところ、本件衣類等は原告の意思に反して横流しされ原状回復が不可能となっている以上、原告は被告に対し、本件衣類等の相当額である一〇億七六一三万八七〇〇円につき損害賠償請求権を有する。
(二) 営業上の損害
被告の横流し行為及びそれに起因する廉価売却により、原告は営業上の損害を被った。この損害は、ブランドに関する年間ライセンス料相当額である定価の一割、すなわち、少なくとも一億円は下らない。
(三) ブランドイメージに対する損害
原告は自社商品の高級婦人服としてのイメージを築き、これを維持するために宣伝広告費、企画開発費その他の資金を投下してきたが、被告による横流し行為及びこれに起因する廉価売却によりその信用を著しく毀損された。これによる損害は三〇〇万円を下らない。
(四) 原告は、前記各損害の合計一一億七九一三万八七〇〇円のうち金二〇〇〇万円を請求する。
第三争点に対する判断
一 被告の債務不履行について
1 被告は、第二の三1(被告の主張)記載の主張をし、証人川北耕市も同様の証言をする。
2 しかしながら、証拠(甲六ないし一三、一四の1、2、一五、一六、証人三ツ木)によれば、以下の各事実が認められる。
(一) 原告が被告に本件衣類を引き渡した後である平成一〇年七月二四日ころ、本件衣類の一部であるルーニィ、ピエスモンテ、クレデヴェールという三種類のブランド品約三〇〇点が、佐賀市内のディスカウントストアにおいて、定価の一〇パーセント程度で販売されている事実が発覚した。
(二) その後も、平成一〇年一〇月二一日には、本件衣類の一部である前記ブランド品約一〇〇点が東京都港区内のディスカウントストアにおいて、同年一一月一一日ころには約二〇〇点が東京都世田谷区内のディスカウントストアにおいて、同年一二月二四日ころにも約一〇〇〇点が東京都世田谷区内のディスカウントストアにおいて、同様に定価の一〇パーセント程度で販売されている事実が発覚した。
(三) これらのディスカウントストアで販売されていた衣類が、本件衣類等の一部であることは衣類に付された製造番号(型番号)から特定できた。また、平成一〇年一二月二四日ころに東京都世田谷区内で発見された衣類については、同時に、本件衣類等の一部であったダンボールが発見されたこと、一点いわゆる傷物として特徴のある商品が発見されたことからも裏付けられた。さらには、これらのディスカウントストアはいずれも前記ブランド品の取扱店舗ではないことからしても、正規の流通経路から入手したものではないことは明らかであった。
3 前記認定事実によれば、被告又はその履行補助者(株式会社キョーエイストック又は株式会社ダイレックス)が、本件衣類等を、本件契約に反し、横流しして処分したことは明らかである。仮に被告ではなく株式会社キョーエイストック又は株式会社ダイレックスが、本件衣類等を横流ししたとしても、これらのものは被告の履行補助者であるから、被告はいずれにせよ債務不履行責任は免れない。
二 損害について
1 被告又はその履行補助者が本件衣類等の全て(五万四九七二点)を横流ししたのかあるいは一部なのかは必ずしも証拠上明らかではないが、前記のように少なくとも一六〇〇点は横流しが確認されているのであるし、ブランド衣類が場所の異なる複数のディスカウントストアにおいていずれも定価の一〇パーセント程度で廉価売却されていること、しかも正規の取扱店舗では平均一〇〇点程度しか取り扱っていない(甲一二)のと比べ、これらのディスカウントストアの販売量は極めて多いことを考慮するならば、この横流しは大規模に行われたもので、確認されているものは氷山の一角に過ぎないものと推認される。
2 そして、原告がこのような不当な廉価売却により、ブランドイメージを傷つけられ、さらには営業上の損害(本件衣類等に関する年間ライセンス料など。)を被ったことは容易に推認できる。
3 1及び2で受けた原告の損害は、少なくとも二〇〇〇万円を下回ることはない。
第四結論
よって、原告の請求は理由がある。
(裁判官 田代雅彦)